「俺とルメイとフィア姫の冒険」は移動しました → こちら
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picture "BABYLON FALLEN" Paul Gustave Dore /MIDI Kyrie Johann Sebastian Bach/ text & edit (c) Seneca
 我が友ルメイが日記をつける習慣をもっていたので、この物語を初めから最後まで書くことができた。それがなかったらここに書いたことは半分になってしまっていただろう。仲間を探しにイルファーロの街へ行くと決めた朝、心の中にはただ不安しかなかった。俺の覚えていることと言ったら、それくらいのものだ。

 イルファーロの酒場で、フィアと出合った。
 俺と、ルメイと、フィアの人生がそこで合流したのだ。今から思えば信じられない幸運だった。この裏切りにあふれた剣呑な時代に、薄情な奴は掃いて捨てるほどいるが、仲間と呼ぶにふさわしい相手にはそうそう出会えるものではない。王族が殺し合い、官吏は賄賂を取り、山賊が野山をうろつくこんなご時世だからこそ、心をひとつに出来る者と出会い、一緒に歩むことが出来たなら、笑うにつけ泣くにつけ生きる甲斐があるというものだ。

 前置きはこれくらいにして、本題に入るとしよう。
 俺とルメイとフィアの冒険は、ある日の朝、スラムの薄汚れた馬小屋で、こんな風に幕を開いたのだ。


01 最悪の朝だ。



02 馬小屋のような粗末な寝床であっても、



03 肌寒い風を突っ切って見晴らしの良い街道に出た。



04 ここから先はイルファーロ、王の統べる街。



05 正門をくぐると



06 「俺は酒が飲みたくて言うわけじゃないが、



07 俺は辺りを見回した。



08 今日は夜市のお祭りとあって、街には人が溢れている。



09 火移しの儀式が行われる噴水広場に出た。



10 窃盗兵セネカ・ハルバート。



11 網目のように路地の入組んだ旧市街を、



12 うさぎどんのお耳が伸びて



13 どうも俺の出番はなさそうである。



14 目をつぶり、鼻にカップをつけて薬湯の香りを嗅ぐ。



15 店主にお代わりの礼を言い、



16 フィアが浴室から出てきた。



17 ドアにノックの音がした。



18 夜道を歩く大勢の人を篝火が照らしだしている。



19 「近衛の検めである! 城門を開けよ!」



20 戻ってくるグリムが黒頭巾を連れている。



21 のっけからグリムの手札に三枚揃いが来た。



22 龍が街の上に伏せている。



23 「その籠を、金貨五枚で売ってくれんかな」



24 「フィアはどこへ行った?」



25 夜市に並んだ篝火がところどころ燃え尽き始めた。



26 「これはまた上品な味ですな」



27 「ニルダの火に触れるのだ」



28 湯の沸く音で目が覚めた。



29 廊下に人の気配がして、フィアが席を立った。



30 「わたしはホリー。あなたはセネカさんじゃない?」



31 装備が整ったので井戸端の列に加わった。



32 懐かしいカオカ街道を往く。







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